
東京都渋谷区富ヶ谷に、パーソナル入浴剤の専門店「湯治(とうじ)laboratory」が2026年7月31日にオープンした。運営するのは、老舗入浴剤メーカーのヤングビーナス薬品工業株式会社だ。同社が展開する薬用入浴剤「湯躍」ブランドの既存製品に加え、店舗では新たな入浴料「YUYAKU」を提供する。
YUYAKUは、一人ひとりに合う湯質と厳選したアロマを組み合わせられるパーソナライズ型の入浴料である。店頭の「手湯」で湯ざわりや香りを実際に確かめながら、100通り以上の組み合わせから今の自分にしっくりくる一湯を選べる仕組みだ。温泉ソムリエによる案内とお勧めの湯を診断するプログラムも用意し、その日の気分に寄り添う一湯を提案する。
手湯で試して選ぶパーソナル入浴料

YUYAKUの選び方は3段階だ。まず湯質の系統を選ぶ。やさしく肌を包み込む塩化物系の湯、すっきりとした湯上がり感の硫酸塩系の湯、なめらかな肌触りが特徴の炭酸水素塩系の湯などを用意している。続いて質感を選ぶ。白濁度は透明・半透明・濁りの3種から選べ、湯粘度はとろみ成分の配合度合いで湯の触感を調整できる。
次に香りと色を選ぶ。香りは10種類以上を取り揃え、標準的な「Standard」と特別な精油を使った「Medessence」の2ラインを用意する。湯質と香り、色をひとつに合わせれば、その日の気分に寄り添う一湯が完成する。湯質入浴料と香り入浴料はそれぞれ単体でも使える設計で、セット価格は660円(税込)からとなっている。
季節湯やワークショップも用意

店舗では入浴料の販売にとどまらず、複数の体験を用意する。柚子湯のように季節の草木や青果を湯に浮かべる日本の習わしにならい、旬の野菜や果実を販売する季節湯の取り扱いもそのひとつだ。湯に浮かべて楽しむだけでなく、味わうこともできるため、湯と食卓の両方から季節を感じられる。
お風呂で使うプロダクトを自分の手でつくるワークショップも開催する。その日の気分に合わせて香りや色を選び、自分だけの一品を持ち帰る内容だ。店内では店舗オリジナルの手ぬぐいなどのグッズも販売しており、「湯躍」のイラストレーションを手掛ける黒田潔氏によるグッズも並ぶ。ご贈答用のギフト対応にも応じている。
別府の湯の花に着想を得た店舗デザイン

店舗デザインは干田正浩氏とMHAA建築設計事務所が手掛けた。細長い平面の既存建物に、通り側から緑道側へ抜ける一本の道を通し、閉じられていた緑道側の壁を取り払って新たな扉を設けた。二つの街路をつなぐ通り抜け空間とし、道を覆うヴォールト天井が空間全体にやわらかな印象を与える。
空間の中心には薬箪笥を思わせるカウンターを置いた。気分や体調に合わせて湯を選ぶと、壁面に並ぶ小さな木の扉から湯が処方される仕組みだ。カウンターの表面には、別府の湯の花を振りかけて焼成したオリジナルタイルを用いており、焼成時の化学反応で生まれる気泡や変色が石の断面のような不均質な表情をつくる。土地から取り出した湯の花を建築素材に用いることで、別府の風土を富ヶ谷の空間へ運ぶ狙いがある。
施設概要・アクセス情報
店舗名:湯治laboratory(とうじラボラトリー)
住所:〒151-0063 東京都渋谷区富ケ谷1-15-10
アクセス:代々木公園駅より徒歩5分
営業時間:平日11:00~18:00、土日祝10:00~18:00
定休日:月・火・水、夏季、年末年始(2026年の夏季休暇は8月11日~19日)
電話:0120-957-098
公式サイト:https://toji-lab.jp
店舗は代々木公園駅から徒歩5分の距離にあり、富ヶ谷の閑静な住宅街に位置する。定休日が月・火・水と平日寄りに設定されているため、来店の際は営業時間と合わせて事前に確認しておきたい。
運営会社と「続magazine」の取り組み
運営元のヤングビーナス薬品工業株式会社は、薬用入浴剤「湯躍」ブランドを展開する老舗入浴剤メーカーである。同社は2024年1月から、心と体のメンテナンスをテーマにしたWebメディア「続magazine(つづくマガジン)」も運営している。毎月26日に新しい記事を掲載し、〈蕪木〉店主の蕪木祐介さん、植物療法士の菅原あゆみさん、お笑い芸人のバービーさんなど、さまざまなフィールドで活躍するみなさまの心身のセルフケアについて取り上げている。
入浴がすべての悩みを解決するわけではない。それでも湯船に浸かってリフレッシュし、リラックスする時間を持続することが、健やかな日々を支える一助になるという考え方が、湯治laboratoryと続magazineに共通する姿勢だ。
都市に持ち込む「湯治」という文化
湯治とは、かつて日本各地の温泉地に身を置き、数日から数週間かけて身体を整えた営みを指す。湯に浸かり、時間をかけて自分と向き合うその習わしは、暮らしの節目に親しまれてきた。忙しさのなかでひと息つく時間さえ忘れがちな現代の生活に、この文化を翻訳して届けようとするのが同店の狙いである。
プロジェクトの起点となったのは、別府の湯の花小屋である。土地に含まれる成分を湯の花として取り出し、日々の湯に用いる知恵は、土地に根差した営みとして受け継がれてきた。この考え方を都市の空間に置き換え、現代の湯治を「選び、つくり、触れる」という一連の行為として再構成した点に、店舗としての新しさがある。
温泉地に足を運ぶ機会が限られる都市生活者にとって、日常の入浴時間を通じて湯治文化に触れられる場所ができたことは、ひとつの選択肢の広がりといえるだろう。パーソナライズされた一湯を選ぶ体験は、単なる入浴剤選びを超えた自分と向き合う時間として注目されそうだ。





