
福島県相馬市の日帰り温泉「そうま温泉 天宝の湯」が、温浴ブランド「昭和レトロな温泉銭湯」として生まれ変わる。運営元の株式会社鉾建仏光堂と、ブランドを手がける株式会社温泉道場が2026年8月28日にパートナーシップ契約を締結した。リニューアルオープンは2027年春を予定しており、地域に根づく日帰り温泉が新しい表情をまとうことになる。
老舗企業とブランド運営会社がタッグ
契約したのは、福島県相馬市に本社を置く株式会社鉾建仏光堂(代表取締役・鉾建祐治氏)と、埼玉県比企郡ときがわ町の株式会社温泉道場(代表取締役・山﨑寿樹氏)だ。両社は天宝の湯を「昭和レトロな温泉銭湯」ブランドとして展開することで合意し、地域住民に長く親しまれてきた施設を再生する狙いがある。年配の利用者には懐かしさを、若い世代には新鮮なレトロ体験を届ける施設への転換を目指す。

2015年開業、ナトリウム塩化物泉の日帰り温泉
そうま温泉 天宝の湯は2015年に開業した。ナトリウム塩化物泉を使う大浴場と露天風呂を備え、サウナと水風呂も併設する。地域住民の日常的な入浴施設として利用されてきた歴史を持つ。今回のリニューアルでは、こうした既存の温浴設備を生かしながら、内装や演出面を「昭和レトロな温泉銭湯」のコンセプトに沿って刷新する見込みだ。
泉質のナトリウム塩化物泉は、いわゆる「塩の湯」と呼ばれる温泉で、湯冷めしにくいとされ、冷え性や疲労回復を目的に利用されることが多い。塩分を含む湯が肌の表面をコーティングし、保温効果が長く続く点が特徴として知られている。露天風呂と組み合わせることで、季節を問わず入浴を楽しめる施設として地域住民に支持されてきた背景がある。今回のリニューアルでは、こうした泉質の魅力をそのまま引き継ぎつつ、空間の見せ方を刷新する形になりそうだ。
「昭和レトロな温泉銭湯」というコンセプト
「昭和レトロな温泉銭湯」は、温泉道場が手がけるコンセプト型の温浴ブランドである。ブリキの看板や昔のポスター、駄菓子屋、レトロゲームなど、昭和時代にタイムスリップしたかのような空間演出が特徴だ。懐かしさを軸にした体験型の温浴施設として、温泉道場の登録商標にもなっている。
このブランドは2025年からフランチャイジーの募集を始めている。比較的小規模な店舗や人口の少ないエリアでも導入しやすい温浴モデルとして設計されており、天宝の湯への導入はその展開事例のひとつに位置づけられる。地方の既存温浴施設が抱える集客の課題に対し、ノスタルジーを軸にしたブランド化がひとつの解決策になり得るか注目される。

運営会社の背景
温泉道場は2011年3月9日の創業で、埼玉県を中心に「おふろcafe(R)」ブランドなどの温浴施設や宿泊施設の運営を手がけてきた。事業再生支援や地域事業への投資も行い、「おふろから文化を発信する」を企業理念に掲げる。温泉道場は株式会社ONDOホールディングス傘下の一社であり、同ホールディングスは株式会社Kii company、株式会社さかなと、株式会社埼玉武蔵ヒートベアーズも傘下に持ち、「地域を沸かす」ための価値創造や地域活性化、人材育成に取り組んでいる。
一方の株式会社鉾建仏光堂は1932年設立の老舗企業で、福島県相馬市塚ノ町に本社を置く。葬儀施行や仏壇販売、墓石の建築施工、寺院仏具の販売に加え、温浴施設の運営も手がけている。地域に根ざした事業基盤を持つ同社が温泉道場と組むことで、天宝の湯は地元密着の運営体制を保ちながらブランド刷新に取り組む形になる。
株式会社ONDOホールディングスは、温泉道場のほかにも複数のグループ会社を傘下に持ち、地域事業への投資や再生支援にも力を入れる。単独の施設運営にとどまらず、地域全体を沸かすという理念のもとで各地の温浴施設と関わってきた実績があり、天宝の湯とのパートナーシップも、その一環として位置づけられる。地域の老舗企業とブランド運営会社が手を組む今回の枠組みは、今後の日帰り温泉業界における事業提携のひとつのモデルケースになりそうだ。
相馬市という地域性
天宝の湯がある相馬市は、福島県浜通り北部に位置し、太平洋に面した港町として知られる。市内では相馬地方の伝統行事「相馬野馬追」が毎年開催されており、地域の歴史や文化を象徴する催しとして全国的にも知名度が高い。海の幸を生かした食文化も豊かで、観光と地場産業が結びついた地域だ。日帰り温泉施設のリニューアルは、こうした地域資源と組み合わさることで、住民だけでなく観光客の立ち寄り先としての役割も期待される。
福島県浜通り地域では、震災からの復興過程で観光や地場産業の再構築が続いてきた。相馬市周辺の日帰り温泉が全国区のブランドを取り入れる動きは、地域内の消費だけでなく、周辺観光地を訪れる旅行者の立ち寄り先としても存在感を高める可能性がある。今後、リニューアル後の具体的な設備やサービス内容が明らかになるにつれ、地元住民や周辺自治体からの反応にも注目が集まりそうだ。
地方の日帰り温浴施設が抱える課題
「昭和レトロな温泉銭湯」ブランドがフランチャイジー募集を開始した背景には、全国各地で日帰り温浴施設の老朽化や利用者減少が課題になっている事情がある。設備更新だけでなく、ブランドとしての世界観を付与することで新規客を呼び込む手法は、地方の中小規模施設にとって選択肢のひとつになり得る。天宝の湯の事例は、地域の葬祭関連事業者が温浴事業を営むという珍しい組み合わせでもあり、異業種が地域インフラを支える動きとしても興味深い。
施設概要・アクセス情報
そうま温泉 天宝の湯の所在地は福島県相馬市小泉高池270で、公式サイトは https://tenpou.main.jp/ で確認できる。運営会社は株式会社鉾建仏光堂(本社・福島県相馬市塚ノ町2丁目3-1、代表・鉾建祐治、設立1932年)、ブランドを提供する株式会社温泉道場は本社を埼玉県比企郡ときがわ町玉川3700に置く。天宝の湯としての現在の営業は続けながら、2027年春のリニューアルオープンに向けて準備が進められる見通しだ。詳しい営業時間や料金、新設備の内容については、今後公式サイトなどで発表されるとみられる。地域に長く根づいてきた日帰り温泉が、老舗企業と専門ブランドの連携によってどのような姿へ生まれ変わるのか、今後の続報が待たれる。




