
建築設計事務所の2id Architects(静岡県浜松市、代表の岡田宰氏)が設計した一棟貸しの温泉宿「Tranquil Ambient Retreat」が、静岡県熱海市に完成した。2026年11月5日に発表された。
設計を担った岡田氏は、国内外のホテルを紹介するYouTubeチャンネル「建築家のバカンス」の主宰者でもある。宿泊施設の設計は今回が初めてで、泊まる側として積み重ねた経験を宿づくりに生かした。
一休.comの宿泊ページによると、宿は2026年9月にオープンしている。素泊まりプランは2名税込102,460円から、朝食付きプランは2名税込110,460円からだ。

海ではなく竹林を望む、熱海の山間に建つ宿
熱海といえば海のイメージが強い。だが「Tranquil Ambient Retreat」が建つのは、熱海の喧騒から少し離れた山間である。目の前には竹林が広がり、近くを流れる川のせせらぎが聞こえる。
設計チームは、この土地が持つ自然そのものを宿の魅力と捉えた。建築を通して自然を感じながら温泉に浸かり、身体を休め、静かな時間を過ごす。そのための空間を計画したという。
宿名の「Tranquil」は穏やかさや静けさを意味する英語だ。海の熱海とは違う、もう一つの熱海の表情を見せる立地といえる。

風景の切り取り方まで設計した空間
この宿で重視されたのは、風景の切り取り方である。玄関から露天風呂へ続く空間には、縦長の開口と、外に向かって広がる勾配天井を採用した。空へ勢いよく伸びる竹の姿を捉え、自然につながる開放感を生んでいる。
リビングでは手法が変わる。水平窓と低く伸びる軒によって、横に広がる竹林を落ち着いた風景として取り込んでいる。
一段下がったソファに腰掛ける。畳に寝そべる。テラスに出て風を感じ、川のせせらぎに耳を傾ける。同じ竹林でも、身体の姿勢や居場所が変われば、自然との関係も変わる。風景を眺めるだけでなく、そこでの過ごし方まで建築でデザインした点が、設計の核になっている。

「Low-Cost, High-Luxury」という考え方
内外装はモノトーンが基調だ。木梁や構造用合板、コンクリートを仕上げとして生かし、装飾を抑えた。そのぶん、竹林の緑や移ろう光が引き立つ。
掲げた考え方は「Low-Cost, High-Luxury」である。高価な素材や華美な装飾でぜいたくをつくるのではない。その土地にしかない自然や風景、温泉、静けさ、ゆっくり流れる時間を、豊かさとして捉え直した。
限られた規模やコストでも、建築が土地の魅力を引き出せば、豊かな宿泊体験はつくれる。2id Architectsは、これを小規模なホテルやヴィラ、別荘に向けた提案の一つと位置づけている。

施設概要・アクセス情報
宿の所在地は静岡県熱海市西山町17-47である。一休.comの掲載によると、1日1組限定の一棟貸しで、客室面積は98平米。寝室は2室あり、定員は大人1名から6名までだ。
アクセスは、熱海駅からタクシーで約2.4km、9分ほど。バスなら熱海駅前2番のりばから伊豆箱根バスで約23分、バス停「西山」で下車し、下車後すぐに着く。
敷地内には屋外の駐車スペースが2台分あり、宿泊者は無料で使える。チェックインは15時から24時、チェックアウトは11時。ペットは同伴できないが、子どもは宿泊できる。
宿のメールアドレスは(参考ソースに記載がないため、掲載元で要確認)と掲載されている。建築・設計に関する取材や相談は、2id Architectsの press@2id-arch.com が窓口だ。

プラン詳細・料金・予約先
予約は宿泊予約サイトの一休.comで受け付けている。1日1組・源泉かけ流しの一棟貸しとして、2種類のプランが並ぶ。
素泊まりプラン(食事なし)は、2名税込102,460円から
朝食付きプランは、2名税込110,460円から
宿泊税と入湯税は代金に含まれる
現地でのクレジットカード決済は不可
朝食は、懐石料理を手がけるシェフが用意する重箱の仕出しだ。有田焼の土鍋に米と水を入れ、火をつければ炊きたてのご飯が味わえる。夕食には、出張シェフによる寿司や懐石のコースが紹介されている。
料金や空室は時期によって変わる。予約の前に、一休.comの公式ページで最新の内容を確かめたい。
予約サイトはhttps://www.ikyu.com/00052842/ である。建築の詳細は、2id Architectsの紹介ページ https://www.2id-arch.com/ で見られる。

源泉かけ流しの露天風呂と泉質
客室には温泉の露天風呂が付く。一休.comの記載では、オリーブグリーンの御影石を使ったインフィニティ形式で、広さは約1.3m×1.5m。2名が足を伸ばして入れる大きさだ。
湯は源泉100%のかけ流しで、温度は自動で調整される。源泉は62度と高温のため、湯張りの段階で加水し、その後は41度を保つ仕組みだという。内風呂も備わり、こちらはドイツのBette社製バスタブを使っている。
泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物温泉で、低張性、弱アルカリ性、高温泉に分類される。適応症には、慢性的な筋肉や関節の痛み、冷え症、末梢循環障害などが挙がっている。入浴の目的や体調によっては、事前に医師への相談も欠かせない。

設計者と運営背景
設計した岡田宰氏は1984年、静岡県浜松市の生まれ。法政大学工学部建築学科を卒業後、ミラノのDomus Academyで修士号を取得した。WONDER WALLやクライン ダイサム アーキテクツでの経験を経て、2016年に独立している。
店舗やホテル、別荘、オフィス、住宅まで、用途を横断して建築とインテリアを手がけてきた。Dezeen Award、Design for Asia、グッドデザイン賞、キッズデザイン賞などの受賞歴もある。
一方、YouTubeチャンネル「建築家のバカンス」では、国内外のホテルやヴィラを建築家の視点で紹介している。登録者数は約3.1万人(2026年11月現在)。年間100泊以上のホテル滞在を重ね、これまで70施設以上を取り上げてきた。
2id Architectsは、住宅や店舗、オフィス、保育施設などを手がける設計事務所である。近年はホテルやヴィラ、別荘といった「滞在する空間」にも領域を広げている。公式サイトはhttps://www.2id-arch.com/ だ。
今回の宿を起点に、ホテルやヴィラ、一棟貸し宿、別荘など、建築と滞在体験をまたぐプロジェクトにも力を入れていく方針である。

熱海温泉の歴史と周辺の楽しみ
熱海温泉は、日本を代表する温泉地の一つだ。熱海市の公式サイトによると、自噴の温泉「熱海七湯」が、この地の歴史で重要な位置を占めてきた。
日本交通公社の観光資源台帳には、1604(慶長9)年に徳川家康が来湯した記録がある。家綱の代からは、江戸城へ熱海の湯を送った記録も残るという。江戸期には湯治場として多くの人が訪れた。
宿の近くには、紅葉の名所の熱海梅園がある。一休.comの案内では、車で5分ほどの距離だ。2026年は11月14日から12月6日まで「熱海梅園もみじまつり」が開かれ、約360本の紅葉を楽しめると紹介されている。
ヴィラの敷地にも、大木2本を含む10本以上の紅葉があるという。紅葉の時期は天候によってずれる場合がある。
海辺の温泉街とは別の顔を持つ山間の一棟貸しとして、熱海の新しい滞在先に挙がりそうだ。建築と温泉を目的に旅を組み立てたい人には、候補の一つになるだろう。









